教材づくりで大切な言葉の選び方・使い方

· コラム

先日、コンサルティングをご利用中のお客様から、こんなメッセージをいただきました。

テキストのサイズを忘れてしまいました。教えてください。

作るべき教材の設計図を描き、いざ制作スタート!となったお客様からのご質問。

教材を作り始めるときはあらかじめこの辺りのことは決めておくのですが、実際の制作作業の過程で「そういえばどうするんだっけ?」と記憶が曖昧になってしまったようでした^^

このお客様の質問背景や意図を私はすぐに理解したのですが、ここではあえてこんなご返信をさせていただきました。

「テキストのサイズ」とのことですが

「文字の大きさ」のことを質問されていますか?

それとも「冊子の大きさ」のことでしょうか?

少々いじわるなご指摘だったかもしれませんが、実はここには「教材づくりにおける大切なヒント」が隠れています。

教材づくりで心がけるべきこと

【鉄則】受講生全員が同じように解釈できる言葉を使う!

小説や芸術作品などは、読む人/見る人によって、いかようにも解釈ができたり、何通りもの解釈があって然るべきです。

あるいは、教材であったとしても「一人ひとり違った感じ方・価値観を持っていること」を確認する意図があるような場合もあるかもしれません。

これらは例外です。

ここで扱う教材の多くは、受講生全員が同じように解釈できる言葉 を使う必要がある、と言えるでしょう。

冒頭の質問を例にすると、「テキスト」という言葉は少なくとも二通りの解釈ができました。

 

仮に、私がセミナーの中で「教材を作る際は、まずはじめにテキストのサイズを決めましょう」と伝えたとします。

「文字の大きさ」と解釈して、「10p? 12p?…」と考える受講生もいれば、

「冊子の大きさ」と解釈して、「A4? A5?…」と考える人がいる可能性もあります。

(ひょっとしたら、他にも別の解釈があるかもしれません)

つまり、ここで生じる「解釈の幅」が教材づくりにおいては致命傷になってしまう… ということです。

同期型授業(いわゆる「対面授業」や「集合型研修」「ライブセミナー」など)の場合は、講師が口頭で補足説明することで「講師側の意図」や「正しい解釈」を伝えられるかもしれません。

一方で、非同期型講座(冊子型教材ベースの通信講座や、動画視聴型のオンライン講座など、受講生がセルフで行う学習)の場合はどうでしょう。

受講生によってその解釈がバラバラのまま学習を進めていくことになり、途中で「あれ、何かが違うぞ…?」となります。

 

早めに気付ければ良いのですが、受講生としては自分の頭の中で積み上げてきた「理解」が土台から崩れてしまうので、想像以上のストレスを感じることになります。

「意図通りの解釈」をしてもらうために

「講師である自分の意図とは違う解釈をする受講生がいるかもしれない」ということを前提として、まずは自分が普段からよく使う「言葉」に意識を向けてみましょう。

特に注意するべきは、その言葉を

  • 文字/文章として使うとき
  • ワークや課題の指示(ディレクション)として使うとき

です。

口頭で伝えるときは「話の流れ」や「その場の雰囲気」「イントネーション」といった情報が加わるので、仮に解釈の幅があったとしても「正しい解釈」にたどり着きやすいと言えます。

ところが、文字/文章の場合はそれらのヒントがないため、受講生は自分が解釈したようにしか解釈できません。

口頭の場合でも「ワークや課題の指示(ディレクション)」として使う場合は、「解釈の違い」によって受講生の行動・アウトプットが変わってしまう場合があります。

「せっかく課題をやってきたのに… こういうことじゃなかったのですね…><」という悲しい事態にならないように、最大限の注意を払いましょう。

解釈に幅がありそうな言葉を使う際は、「これは〜〜という意味ではありません」など、あえて「NG解釈」を伝えるのも有効です。

例)「まずはじめに、テキストのサイズを決めましょう。ここでは文字のサイズではなく、冊子の大きさという意味です」

 

または、別の言葉に置き換えることで、解釈の幅を狭めることもできます。

 

例)「テキスト(冊子を指す場合)」→「冊子型教材」と言い換える

同時に「受講生をよーく観察すること」も大切です。

「世の中の人全員が同じように解釈できる言葉を選ぶ」のは不可能ですが、「自分の講座の受講生」に限れば難しいことではないはずです。

 

受講生がどんな属性で、どんな環境で、普段どんな言葉を使い・聞いている人たちなのか?

そんなところにもヒントはたくさんあります。

 

「意図通り解釈してもらえる言葉」を使い、受講生をスムーズに学習に誘いましょう。